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ステンドグラスブログ

ステンドグラス制作の流れ
2020/11/02
こんにちは、埼玉県さいたま市のステンドグラス工房「YUKO TERASHIMA ART & DESIGN」の代表 寺島裕子です。
ステンドグラスは多くの人にとってご自宅や街中で見かける、ある程度身近な存在であると思います。
しかし、ステンドグラスがどうやって制作されているかを知っている人は少ないのではないでしょうか?
実際私もステンドグラス制作を始めるまではどの様に作られているか知りませんでした。
実はステンドグラス制作は知れば知るほど奥深く楽しい世界なのでご紹介いたします。
私が主に作る方法はティファニー式という銅のテープで溶接する方法です。
これは主にランプの制作に使われる技法です。
大きなパネルはケイム式が主流ですが、私の場合はあえて細かい表現が可能なティファニー式でパネルを制作しています。
ステンドグラス制作の流れ1デザイン

まずはお客様からの依頼を受けてデザインを具体化します。
(自分の作品の場合は制作したいイメージを考えます。)
実際、実はここが最も重要な部分ではないかと思います。
ステンドグラスの制作は、ざっくり言えばガラスをカットしてそれを組み上げるという作業です。
ある程度の経験を積んで覚えれば、(仕上がりの精度など、クオリティは抜きにすれば)誰にでも作ることが出来ます。
だからこそ、デザインが重要なのです。
ただし、例えば絵画のように、デッサンから初めて絵が描けるようになる、ということとは違った難しさがあります。
それは“ガラス”という素材の特性を考えてデザインしなければならず、ステンドグラスの制作の過程で可能なデザインを考えなければないということです。
例えば細かすぎる表現には限界があり、「ガラスカットだけで表現するのか?」または「絵付けで表現するのか?」といった方法での選択があります。
ガラスの細い部分は割れやすいという特性も考えて分割線を入れなければなりません。
このように、素材と技法の制約の中で、いかにそれを生かしたデザインが考えられるのかが重要なのです。
本当に美しい作品は「制作可能なデザイン」ということを超えて、「ガラスの特徴を最大限に生かす」総合力の結集なのです!
美しいデザインを考えられるだけの “絵心” や“デッサン力”、“デザイン力”も必要でしょうし、それを形に出来るかどうか、判断できる “経験値”や“技術力”も必要です。
きっとすべての工芸作品に通じることだと思います。
だからこそ「人間国宝」と呼ばれる工芸家の人たちは大変な努力を積んでいるんでしょうね。
ステンドグラスで素晴らしい作品を作っている作家の方々もそのような総合的な力を身につけた“スゴイひと”なのです!
ステンドグラス制作の流れ2ガラスカット

次に型紙通りにガラスを選んでカットしていきます。
デザインの段階である程度色は決めていますが、実際にガラスを選びます。
マシンメイドのガラスはほとんど色に差はありませんが、高価なガラスは職人の手で一つひとつ作られており、微妙に色味も異なります。
しかも光の状態で見た目の印象も変わるのでここでのチョイスで作品の印象はガラリとかわります!
そして型紙に合わせて専用のガラスカッターやバンドソー(ガラス専用の電動鋸)でガラスをカットしていきますが、ここでの精度も重要です。
ステンドグラス制作の流れ3テープ巻き

カットが終わると、全てのピースに一つずつテープを巻いていきます。
カッパーホイルと言いますが、銅で出来たテープで、ガラスの厚みに合わせて数種類の厚みのカッパーホイルを選んで巻いていきます。
最終的にハンダで溶接していきますが、ガラスにハンダは付きません。
このテープ部分にハンダを載せることで角ピースを接着して組み上げていきます。
ステンドグラス制作の流れ4ハンダ付け
テープが巻き終わった全てのピースを最終イメージにレイアウトし、いよいよハンダ付けです。
このとき、フラックスという薬剤を塗りながらハンダします。
このフラックスを塗らないとハンダがつきません。
ハンダを均一にむらなく、シワなく載せるのも技術が要ります。
ステンドグラス制作の流れ5フレームの作成
このままですと四隅の強度が足りません。
そこで周りにコの字型の真鍮のバーを回します。
真鍮のバーとステンド本体もハンダで溶接していきます。
ステンドグラス制作の流れ6色染め
ハンダが終わった後は全体を一度洗浄します。
ハンダの際に使用したフラックスなどを洗い流します。
そしてパティーナという染料を使い、ハンダの線を染めていきます。
パティーナには黒や銅色、褐色などいくつかの種類があります。
ここでやっと銀色のハンダの線に色が付き、最終イメージになります。
ステンドグラス制作の流れ7パテで補強する
さらに補強のために、真鍮バーとガラスの間にパテを埋めていきます。
パテはクッション材のような役割で、これをすることで振動が加わってもカタカタと動いて割れるようなことが避けられます。
パテは数日から1週間くらいで硬化していきます。
ステンドグラス制作の流れ8ワックスで艶出し
最後にハンダの線の上にワックスを塗ります。
これでハンダの線にツヤを出し、保護してくれます。
そしてやっと完成です!

ステンドグラス制作についてのご質問も受け付けております
いかがだったでしょうか?
私の場合は大体このような流れで制作しています。
これはあくまで私の制作の場合になります。
そもそも大型のパネルをティファニー技法だけで作るのはあまりオススメ出来ないと考える方も多いようですので・・・。
私が教わった師匠は自分のイメージを大切にしたものづくりに重点を置かれる方で、今までの考え方にとらわれない、自由な制作を勧めてくださる方でした。
作りたいイメージの手段として自由に技法を選ぶ・・・そういった考え方に私自身も大変感銘を受けました。
型は決まっているようで、実は自由なのです!
皆さんも是非本物のステンドグラスに触れてみてください。
ステンドグラス制作についてご質問等ございましたらお気軽にお声掛けください。

Yuko Terashima Art & Designとは
グラフィックデザイナーとして活躍した経験を活かし、
動物や植物、食べ物などのステンドグラス作品を作っています。